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【1046号室の男】被害者が拷問の末に殺害された未解決事件とは?

謎の宿泊客、不可解な電話、そして存在しない身元——。
「1046号室の男」と呼ばれるこの事件は、1935年にアメリカで起きた最も奇妙な未解決事件の一つです。
犯人が誰かも、被害者が本当は誰だったのかも、いまだにわかっていません。

はじめに

アメリカ犯罪史の中でも、「1046号室の男(The Mystery of Room 1046)」は異質な存在です。
1935年にカンザス州のホテルで発見された被害者は、拷問を受けて瀕死の状態で見つかりましたが、最後まで「誰にもやられていない」と語り息を引き取りました。
その後、警察が調べたところ、名前も住所も偽名。身元も特定されず、事件は今も未解決のままです。

本記事では、当時の捜査資料や証言をもとに、
「1046号室の男」が何を恐れていたのか、そしてなぜ正体不明のまま死を迎えたのかを探ります。


1046号室未解決事件とは

1935年1月、カンザス州カンザスシティの「プレジデントホテル」で、ひとりの男性がチェックインしました。
宿泊名簿には「ローランド・T・オーウェン(Roland T. Owen)」と記され、住所はロサンゼルス。

しかし後に、この男の正体は架空のものであると判明します。
つまり、偽名を使って宿泊していた「誰か」 だったのです。


ローランド・T・オーウェンという名の男

外見と特徴

・年齢は20代半ばほど
・こめかみに古い傷跡
・耳の形が潰れており、格闘家のような印象
・持ち物はほとんどなし。着ていたのは黒いコートのみ

奇妙な行動

彼は「通りに面していない部屋」を希望し、10階の1046号室に宿泊しました。
まるで、何かを避けようとしているように見えたと、ホテルの従業員は証言しています。

チェックイン後、彼は洗面台に櫛や歯磨き粉を並べ、窓を開閉して確認するなど、
異常なほど慎重に行動していたそうです。


何かに怯えるような様子

メイドが部屋を訪れたとき、オーウェンはいつも部屋を真っ暗にしていました。
カーテンを閉め、照明はランプひとつ。
まるで「誰かに見られること」を恐れていたようだったといいます。

彼はメイドに対してこう頼みました。

「これから来客があるから、鍵は開けておいてくれ」

この時点ですでに、オーウェンは誰かと会う約束をしていた可能性があります。


謎の人物「Don」

部屋には一枚のメモが残されていました。

「Don、15分後に戻ってきます。お待ちください。」

その名は Don(ドン)
後にこの人物は、事件の核心を握るキーパーソンとして浮上します。

メイドの証言によると、
・電話で「Don」と話す声を何度も聞いた
・夜には部屋から「口論のような声」が聞こえた
ということです。


事件の発覚

1935年1月4日。
ホテルのスタッフが1046号室へ電話をかけると、受話器が外れていました。
部屋のドアは内側からロックされており、オーウェンは中にいる様子でした。

「明かりをつけてくれ」と言ったきり返事が途絶えたため、
スタッフは一旦戻りましたが、再び電話を確認するとまた受話器が外れています。

不審に思ったスタッフが合鍵で入室すると、
室内は血の臭いが充満していました。

壁・床・ベッド・バスルーム、どこを見ても血の跡。
その中央で、オーウェンが裸で倒れていました。


オーウェンの死亡確認

駆けつけた警察が確認したところ、彼はまだ息がありました。
しかし状態は深刻で、

  • 胸部に複数の刺し傷

  • 頭蓋骨の陥没

  • 手足と首に縄の痕跡

明らかに拷問を受けた形跡がありました。

それでも彼は、警察の質問に対してこう答えました。

「誰もやっていない。自分で浴槽にぶつかっただけだ。」

この言葉を最後に、オーウェンは病院で息を引き取りました。


存在しない「ローランド・T・オーウェン」と「Don」

警察が調べたところ、「ローランド・T・オーウェン」などという人物は存在しませんでした。
名前も住所も架空。つまり、宿泊客は偽名を使っていたのです。

さらに、彼が電話で話していた「Don」という人物も、
当時の記録や証言からは特定できませんでした。


不審な部屋の痕跡

事件現場の1046号室からは、いくつか奇妙なものが見つかりました。

  • 女性の指紋(ランプから採取)

  • 水の入ったグラスが2つ

  • 未開封の硫酸の小瓶

  • ヘアピン、安全ピン、未使用のタバコ

  • そして、オーウェンの服が全て消えていた

女性の指紋が残っていた理由は定かではなく、
警察は「前の宿泊者の可能性」も指摘しました。

しかし、共犯者がいたのか、あるいは男女2人でいたのか、今も謎のままです。


謎の匿名電話と「永遠の愛」

事件後、身元不明のまま葬儀が行われることになりました。
ところが葬儀前日、警察に一本の電話が入ります。

「亡くなったのは私の義理の兄弟だ。葬儀代は私が払う。」

電話の主は名乗らず、数時間後、現金が包まれた封筒が届きました。
送り主は不明。さらに葬儀当日、13本の花束とカードが届きました。

そこには、こう書かれていたといいます。

「永遠の愛 ルイーズ」

誰が「ルイーズ」なのかは、いまも不明です。


犯罪心理学で見る「1046号室の男」

この事件は、被害者・加害者ともに特定できない極めて異例のケースです。
心理学的には、被害者が**「恐怖回避型の行動」を取り続けていた**点が注目されます。

行動心理のポイント

  • 通りに面していない部屋を選ぶ

  • カーテンを閉め続ける

  • 外部と接触を避ける
    これらは、「自分が狙われている」という確信を持っていた人物の行動に似ています。

また、警察への供述「誰もやっていない」も、
恐怖や忠誠、もしくは共犯関係から生まれた「沈黙の防衛反応」と考えられます。


事件後の再捜査と新たな説

事件の1年後、ある女性が写真を見て「友人の息子に似ている」と証言しました。
その後、彼の本名は アルテマス・オグルトゥリー(Artemus Ogletree) である可能性が浮上します。

しかし、確定的な証拠はなく、警察も再捜査に至りませんでした。
当時の資料は限られ、真相は今も闇の中です。


危機管理アドバイス:怪しい行動に気づく力を

この事件から学べる教訓は、「異常な行動には理由がある」ということです。

  • 急に怯えたり、不自然に外出を避ける人

  • 周囲の視線を過度に気にする人

  • 身元や行動の説明を避ける人

そうした兆候は、犯罪被害の前兆であることがあります。
もし身近な人にそのような変化を感じたら、信頼できる第三者や警察に相談する勇気を持ちましょう。


まとめ:闇に消えた「1046号室の男」

「1046号室の男」は、

  • 犯人不明

  • 被害者の正体も不明

  • 動機も不明
    という、三重の謎を抱えたまま終わった事件です。

いまだに語られるのは、彼が何を恐れ、誰を信じ、なぜ沈黙したのかという疑問。
その答えは、1935年のホテルの一室に閉じ込められたままです。

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