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キャンバーウェルの血塗られた晩餐〜ジョン・ボーデンの狂気〜

① オープニング

こんばんは。夜の帳が下りる頃、人間の心の闇が、静かに、そして確実に顔を出す。 事件系音声配信番組、『CRIMINAL NIGHT』へようこそ。 今夜もストーリーテラーを務めさせていただきます、霧谷司です。

みんな、今日も1日お疲れ様。あたたかい部屋で、リラックスして聴いてくれているかな? でもね、今夜お話しする事件は……ちょっとだけ、背筋が凍るかもしれない。いや、もしかしたら、人間の本当の恐ろしさを知って、眠れなくなってしまうかもしれない。だから、もし怖くなったら、無理せずに途中で休んでね。

 みんなは、「血の海」って言葉を聞いたことがあるかな? 映画や漫画の中なら、よくある表現だよね。でも、もしそれが現実の出来事だったら? しかも、その血の海のド真ん中で、まるで何もなかったかのように、いびきをかいてスヤスヤと眠っている人間たちがいたとしたら……君はどう思う?

「えっ? 目の前で恐ろしいことが起きたのに、なんで眠れるの?」って不思議に思うよね。 そう、今回紹介するのは、1980年のイギリス・ロンドンで起きた、あまりにも異常で、あまりにも残酷な事件。 人間の心から「感情」というものがスッポリと抜け落ちてしまった男たちの、想像を絶する凶行だ。

今夜の事件名は……「キャンバーウェルの血塗られた晩餐〜ジョン・ボーデンの狂気〜」

さあ、耳をすませて。絶対に現実では味わいたくない、冷たい恐怖の世界へ……君をご案内しよう。

 

② 事件の概要

それでは、事件の全貌について、ゆっくりと時間をかけて、詳しく話していくね。頭の中で、その時の情景を想像しながら聴いてほしい。

時代は、今から40年以上前。1980年の11月9日、イギリスの首都、ロンドンのキャンバーウェルという街でのことだ。 季節は秋も深まり、肌寒くなってきた頃。時刻は、誰もが深い眠りについている午前4時だった。

 静まり返った夜の街に、突然、警察のサイレンが鳴り響いた。 ある通報を受けた警察官たちが、公営の古いアパートに駆けつけたんだ。警察官たちは、通報の内容があまりにも信じがたいものだったから、半信半疑でアパートのドアの前に立った。 そして、「警察だ!」と叫んで、重いドアを蹴り破るようにして部屋の中へ踏み込んだんだ。

その瞬間、ベテランの警察官たちでさえ、思わず息を呑み、足がすくんでしまった。 なぜか?……部屋中が、文字通り「血の海」だったからだ。

 床は真っ赤に染まり、壁にはおびただしい数の血しぶきが飛び散っていた。 部屋の中央にあるテーブルの上には、食べかけのテイクアウトの中華料理が置かれていたんだけど、そこにも血の池ができていたんだ。 普通なら、こんな凄惨(せいさん)な現場を見たら、誰もがパニックになるよね。

でも、一番異常だったのは、その血の海の中で、男3人と女1人が……なんと、グースカと気持ちよさそうに眠っていたことなんだ。 彼らは、自分たちの服が血まみれになっていることにも気づかず、まるでピクニックの帰りに疲れ果てて眠ってしまったかのような、安らかな顔をしていたという。

ここで、警察は「一体、誰の血なんだ!?」と慌てて捜査を始めた。 そして夜が明ける頃、アパートの近くにあるゴミ捨て場や路地裏から、恐ろしいものが次々と見つかった。なんと、バラバラにされた人間の遺体だったんだ。

被害者の名前は、ドナルド・ライアン。47歳の元ボクサーの男性だった。 彼はどうして、こんな無残な姿になってしまったのか? 時計の針を、少しだけ巻き戻してみよう。

 事件の主犯格は、当時26歳のジョン・ジンジャー・ボーデンという男だった。彼はひどいアルコール依存症で、お酒がないと生きていけない状態だったんだ。 彼には仲間がいた。墓掘り(お墓を作る仕事)をしているマイケル・ウォードと、その恋人のシャーリー・ブリンドル、そしてデヴィッド・ペグリーという人物だ。この仲間たちもみんな、お酒に溺れているような人たちだった。

事件の日、ジョン・ボーデンは「一緒にお酒を飲もうぜ」と、ドナルド・ライアンをこのアパートの部屋に誘い込んだんだ。 ボーデンの本当の目的は、ドナルドとお酒を楽しむことじゃなかった。「こいつから、お金を奪ってやろう」という、強盗の計画だったんだね。

ドナルドが部屋に入ってきて、気を抜いたその瞬間。 ボーデンは、手元にあった空き瓶(あるいは大きなナタ)を振り上げ、元ボクサーであるドナルドの頭を力いっぱい殴りつけた!。

 不意打ちを食らったドナルドは、バタリと床に倒れ込んで気絶してしまった。 「よし、今のうちだ」と、ボーデンはドナルドのポケットに手をつっこみ、お金を探した。

でもね、ここからが事件の狂気を一気に加速させることになった。 ドナルドのポケットから出てきたのは……たったの20ポンドだったんだ。今の日本のお金で言うと、だいたい数千円くらい。 ドナルドはその時、仕事がなくて失業中だったから、そもそもお金なんてほとんど持っていなかったんだよ。

これを見たボーデンは、とんでもない行動に出る。 「ふざけやがって! たったのこれっぽっちか!」 怒り狂ったボーデンは、気絶しているドナルドを引きずって、お風呂場に連れて行った。そして、なんと……お風呂に熱湯をグラグラに沸かし、その中に生きたままのドナルドを放り込んだんだ!

本当に、耳を疑うような残酷さだよね。さらに恐ろしいのはその後。 彼らはお湯からドナルドを引き上げると、電動の肉切りナイフ(ウィーンと動くノコギリのような包丁だね)を持ち出して、彼の体をバラバラに切り刻み始めたんだ……。

その時、ドナルドがまだ生きていたのか、それとももう亡くなっていたのかは、今でもハッキリとは分かっていない。でも、最後に首を切り落とされた時には、すでに出血がひどくて亡くなっていたと考えられているんだ。

彼らは、まるでゲームでもしているかのように、ドナルドの首を「トロフィー(優勝カップ)」のように高く掲げて大喜びしたという。そして、その首をなんと「冷蔵庫」の中にしまい込んだんだ。 残りの体はビニール袋に詰め込むと、彼らは平然とした顔で「腹が減ったな」と言い出し、テイクアウトの中華料理を買ってきて、血の海と化した部屋でむしゃむしゃと食べた。

その後、遺体の入った袋を持って外に出かけ、街の空き地やゴミ箱にポイポイと適当に捨てて回ったんだ。冷蔵庫に入れていた首まで、結局はゴミ捨て場に投げ捨ててしまった。 そして、ゴミ捨てが終わると「よし、一杯やろうぜ」と近くのパブ(お酒を飲むお店)に行き、泥酔するまでお酒を飲んで、アパートの部屋に帰ってきた。

そうして、床にこびりついた血まみれの上で、いびきをかいて眠っていたところを、警察に踏み込まれた……というわけなんだ。

でも、みんな不思議に思わない? 「なんで警察は、そんな真夜中にピンポイントでこの部屋に駆けつけられたの?」って。

実はね、この極悪な4人組は、遺体を捨てに行く途中で、わざわざ仲間のマイケル・ウォードの「本妻(結婚している本当の奥さん)」の家に立ち寄っていたんだ。そして、信じられないことに「俺たち、今さっき人を殺してバラバラにしてきたんだぜ!」と、自慢げに話したんだよ。 それを聞いた奥さんが、あまりの恐ろしさに「この人たち、完全に狂ってる!」と震えながら警察に通報したから、逮捕につながったんだ。

後の裁判でこの事件の詳細が語られたとき、話を聞いていた陪審員(一般市民の裁判員)たちは、あまりの気持ち悪さに次々と吐き気をもよおし、何度も裁判がストップしてしまったという記録が残っているほどだよ。

③ 犯人像

司: さて、ここまで聞くと「ジョン・ボーデンって、生まれつきの悪魔みたいな怪物なんじゃないか?」と思うかもしれない。でも、実はそうじゃないんだ。

ボーデンは1956年にロンドンで生まれた。ごくごく普通の、どこにでもあるような家庭で育ったんだよ。 驚くべきことに、子どもの頃の彼は、他人にとても優しくて、親切な少年だったと言われているんだ。近所の人たちからも「いい子だね」と可愛がられるような子供だった。

じゃあ、なぜそんな優しい少年が、血も涙もない殺人鬼に変わってしまったのか。 その一番の原因は、「悪い仲間」と「お酒(アルコール)」だった。

成長するにつれて、ボーデンは不良仲間とつるむようになり、少しずつ悪い道へと足を踏み外していった。窃盗(ドロボウ)や強盗、そして人に暴力を振るう傷害事件を繰り返すようになったんだ。 そして、ひどいアルコール依存症になってしまった。お酒を飲むと、自分の中のストッパーが外れて、凶暴な性格がむき出しになる。

彼は一度結婚もしているんだけど、あまりにも荒れた生活態度に、奥さんはすぐに愛想を尽かして離婚してしまった。 24歳の時には逮捕されて、刑務所に5年間も入れられている。普通なら、刑務所に入れば「あぁ、悪いことをしたな」と反省するはずだよね。でも、彼にはその「反省」という機能がすっかり壊れてしまっていたんだ。刑務所の中でも何度も脱走を企てて、独りぼっちの狭い部屋(独房)に入れられたりしていた。

そして刑務所を出た後、彼の心は以前よりもさらに真っ黒に荒みきっていた。そこで同じようにアルコールに溺れていたマイケル・ウォードたちと合流し、今回の想像を絶する事件を引き起こしてしまったんだ。

④ 犯人の動機の考察

 さあ、ここからがこの番組『CRIMINAL NIGHT』の真骨頂。 ジョン・ボーデンはどうして、これほどまでに残酷な真似ができたのか? 彼の頭の中では一体何が起きていたのか? 僕なりの視点で、皆さんがハッと驚くような3つの考察をお話ししよう。

【考察その1:たった数千円に宿った、すり替えられた怒り】 先ほど、ドナルドのポケットには「たった20ポンド(数千円)」しか入っていなかったとお話ししたよね。 普通なら「なんだ、金持ってないのか。チッ、帰れ!」で終わる話かもしれない。でもボーデンは激怒し、被害者を熱湯に放り込んだ。 なぜか? これは、単なる「お金が少なかったから」という理由じゃない。 彼の心の中には、自分のうまくいかない人生、離婚、刑務所暮らしといった「社会や人生に対するものすごい不満」がドロドロに溜まっていたんだ。その巨大なストレスと怒りが、「たった20ポンドしか持っていなかったドナルド」という弱い存在に向けられて、一気に爆発してしまった。つまり、ドナルドは「ボーデンの人生の八つ当たりの道具」にされてしまった、と考えられるんだ。

【考察その2:生首の冷蔵庫保存が示す、神様気取りの支配欲】 遺体をバラバラにした後、彼らは首を「トロフィー」のように掲げて笑い、冷蔵庫にしまったよね。 これは犯罪心理学的に見ると、非常に異常な「支配欲(相手を完全に自分の思い通りにしたいという欲求)」の表れなんだ。 元ボクサーという、本来なら自分より強くて立派な人間を、自分の手でバラバラにし、一部を冷蔵庫という日常の空間に閉じ込める。これによって、社会の底辺で生きてきたボーデンは「俺は他人の命をどうにでもできる、神様のように偉い存在なんだ」という、歪んだ全能感(何でもできるという勘違い)に酔いしれていたんだと思う。だから、遺体を捨てる時もコソコソ隠すのではなく、奥さんに「自慢」しに行ってしまったんだね。

【考察その3:血の海での晩餐が証明する「人間性の完全なシャットダウン」】 僕が一番恐ろしいと思うのはここだ。人間を解体した直後、血みどろの部屋で「中華料理を食べて、いびきをかいて眠る」という行動。 これは、アルコールが脳を完全に麻痺させていたのはもちろんだけど、「集団心理による狂気の麻痺」が起きていたんだ。 1人なら絶対に怖くてできないことも、似たような異常な仲間が3人、4人と集まると、「これが俺たちの普通だぜ」「お前も平気だろ? 俺も平気さ」という謎の連帯感が生まれてしまう。彼らの脳内では、もはや「殺人」ではなく、「仲間とのちょっと過激なパーティー」に脳内変換されていた。だからこそ、罪悪感というスイッチが完全にオフになり、赤ちゃんのようによく眠ることができたんだ。

⑤ 注意喚起・エンディング(犯罪心理学からの警告)

みんな、息を止めて聴いてくれていたかもしれないね。深呼吸して。 この事件の裁判で、ボーデンは「終身刑(一生刑務所から出られない刑)」を言い渡されたんだ。裁判官は「これほど身の毛のよだつ残酷な事件は聞いたことがない」と彼を非難した。 でも、ボーデンは最後まで一切反省しなかった。それどころか、裁判官に向かって「このクソじじい! ガンになって死んじまえ!」と暴言を吐き捨てたんだ。さらに、刑務所に入った後も、副所長を人質にして立てこもる事件を起こすなど、彼の狂気は決して治ることはなかった。

最後に、犯罪心理学の観点から、僕からみんなへ大切な「注意喚起」をしておきたい。 ジョン・ボーデンは最初から悪魔だったわけじゃない。優しい少年だった彼を怪物に変えたのは、「アルコールへの強い依存」と「自分を肯定してくれる悪い仲間」という環境だった。

人間は、誰だって心の中に弱い部分を持っている。辛いこと、逃げ出したいことがあるかもしれない。でも、その弱さを「お酒」や「違法な薬物」、あるいは「過激な行動で気を引こうとする仲間」で埋めようとすると、脳のブレーキはあっという間に壊れてしまうんだ。 「朱に交われば赤くなる」ということわざがあるように、一緒にいる人間の影響は計り知れない。 もし、君の周りに「何かおかしいな」「ちょっと危ないことを平気でやっているな」と感じる友達がいたら、勇気を出して距離を置いてほしい。自分の身を守るための「心の防犯線」を、しっかりと張っておくんだよ。

今夜の物語はここまで。 人間の心は、温かい光にもなれば、底なしの暗闇にもなる。 君は明日、温かい光のほうへ歩いていけますように。

お相手は、霧谷司でした。 また次回の『CRIMINAL NIGHT』で、夜の闇が深まる頃にお会いしましょう。 おやすみ。

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